こんにちは!
梅雨の季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
今回の学術大会もコロナ禍という事で、前回同様、web上で開催されました。
自分が何を知ってて、何を知らないかを知るのは、とても楽しいです。
今日は、何度か書いていますが、
改めて、歯周病と免疫細胞についてのお浚いです。
1. 歯ブラシは最大の武器
『今日も歯ブラシお疲れ様です!行き届いたブラッシング、歯間ブラシにフロスをありがとう!』
そう言うのは、生体免疫細胞軍。
ここは、歯と歯茎の境界線。
外部からの侵入者に目を光らせて、いつもガードを固めています。
対するは、空気が嫌いで血液が大好物の歯周病菌軍。
境界線をこえて、自分達の住みやすい環境を目指し、歯周ポケットの奥に行こうとします。隙をみては、侵入を試みるも、たちまち免疫細胞に飲み込まれ、手も足も出ません。
今日も免疫細胞軍は勝利を収め、目を光らせて任務を遂行してくれています。
《境界線》
2.境界線での戦い
ある日、この境界線に異変がおきました。
大量の細菌を一層してくれる、
境界線最大の武器のブラッシングが
ここ最近姿を見せなくなりました
ブラッシング事情が、以前とは違う環境に陥った時、境界線はどうなっているでしょう?
歯周病菌軍は、今までのような簡単な装備ではなく、より強固なバイオフィルムという鎧をまとうようになり、歩兵ばかりの集団に大将が現れます。
大将が現れると、さらに戦いは激しくなります。
豊富な血液とタンパク質を餌とし、酸素のない好環境の中で
自分達の邪魔する歯ブラシも届かず
菌は猛威を振るい増え続けます。
歯周ポケットの奥での戦いは
屍となった歯周病菌と免疫細胞でいっぱいになり、膿となって排出されることから、以前は『歯槽膿漏』と呼ばれていました。
もはやこれまでかと、免疫細胞軍は
ある決断をします。
骨を壊してしまおう!!!
歯周病菌が全身に侵入するのを防ぐため、被害を最小限に留めようと、あえて『失う』という苦肉の作戦をとります。
このため、自分を守るはずの免疫細胞が、自分の骨を攻撃し始めます
トカゲのしっぽ切りと同じ原理が働いていると言われています。
そして、骨はなくなり、支えを失った歯は抜け落ち、歯茎は腫れ、口の中は破壊し尽くされ焼け野原のようになります。
3.歯周病菌と全身の関わり
まだまだ終わりません。猛威をふるっている歯周病菌軍は
突破した歯茎の血管から、体の内部へと進行していきます。
迎え撃つ体内の免疫細胞との戦いでは
死滅しますが、
その後には、強い毒を置き土産として残していきます本当に
タチの悪い歯周病菌軍
この毒は、血管を通り全身に撒き散らされます。
脳梗塞や心筋梗塞のリスク
糖尿病では血糖値を下げるインスリンの働きを悪くし、
低体重児や早産のリスク
誤嚥性肺炎のリスク
歯を、骨を失う以外にも
さまざまな病気を悪化させるリスクファクターとなります。
ここまで壮絶な戦いが繰り広げられていても、痛みなく進行して行きます。
自覚症状が殆どない事から
歯周病はSilent disease(サイレント ディジーズ静かなる病気)と言われ、
自覚症状が出始めて、気がつく頃には重症化している病気なのです。
4.歯周病菌軍の敵は?
死滅した後にも毒をばら撒く細菌軍。
一筋縄では行きません。
前線は、歯周ポケットと言う、歯ブラシも届かない深い歯茎の奥底。
そこにアクセスできるのは
私達、歯科医師と歯科衛生士です。
専門用語でスケーリング・ルートプレーニングという、歯と歯茎の境目から専用の器具を使い、器具の感触を頼りに、歯周ポケットの奥底まで徹底的に一掃する治療を行います。
これは、目に見えない場所を掃除するので、レントゲンや、検査データを見ながら、歯の根の形、歯石の形態等を熟知していなければ出来ません。
歯周病治療のメインと言っても過言ではありません。
5.ここからが始まり
治療終了後からが、実は始まりです。
歯周病菌は常在菌なので、いつでもバランスが崩れると再発します。
大切なのは、ここから。
以前書いたメインテナンスって得するの?をご参照下さい。
→関連記事「歯周病治療後のメインテナンスって面倒?しないと抜歯のリスクがあがるかも」
『健康は健口から』そして『健幸』へ。
お口の機能は噛むこと、飲み込む事以外にも、楽しく笑ったり話したりする役割もあります。
人生100年時代といわれる今日、
皆様のお口の中の健康から全身の健康へ関与できるのは歯科医院です。
歯科衛生士として、昨日より今日の自分の技術を磨き、知識を入れ、皆様の豊かな生活に貢献できるよう、今後も精進して行きたいと思います。
歯科衛生士 並木真由美
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